<特集 国連社会権委員会最終見解>
国連・社会権委員会の総括所見を読んで
(野宿をしている人との関連から)
私は野宿している人との関連で、今回の社会権委員会の総括所見中の関連する項目についての感想を書いてみます。
日本政府「報告」の「相当な住居についての権利」(第11条3)の校には「なお、ホームレス、違法居住者および追い立てに関する統計データはない」と書かれてました。これは日本政府が野宿(ホームレスネス)の問題に無関心さを示していますNGOがホームレスの現状を訴えたために、委員会の見解に幾らかが反映されました。
委員会は、始めに懸念事項を列挙し、後半でそれらに関する勧告を列記しています。
懸念事項
まず、政府・議会・裁判所が社会権規約を真剣に受け止めていないこと、政府が国内法を整備せず、それを理由に裁判所も判決に生かしていないことを懸念しています。国内法がないから放置してよいのであれば、国際的に人権を守る条約を批准した意味がないのです。
また、委員会は釜ヶ崎を中心に全国に多数のホームレスが存在していること、政府がホームレス問題に対する包括的な計画を持っていないことを憂慮しています(30)。この点に関して、委員会は、強制立ち退き、特に仮住まいのホームレス(中略)に対する強制立ち退きを憂慮しています。
これは98年12月28日の今宮中学校横での強制追い立て等にあたって、裁判所は行政の仮処分命令を簡単に認め、テント住民が異議申し立てを行っても、ろくに審査せず、弁論もさせず、理由もつけずに、予定の追い立て期日に間に合うように、却下したことをさしています。このような扱いがゆるされるなら、執行停止の訴えも、上訴する権利もが無意味になります。その結果、仮の立ち退き命令は恒久的な立ち退き命令に変容し、委員会が一般的意見4、7で確立したガイドラインに違反する、と強く述べています。委員会は日本の裁判所が、規約のどの条項も直接的効力を有しないという誤った根拠に立って、判決等に際し、規約を参照しないという事実に懸念を表明しています。
これらの懸念をふまえて、委員会は日本政府に対し、規約の条項が、直接適用可能なものとして解釈するように、強く勧告しています。また、規約の条項が、立法・行政の施策及び決定過程に確実に取り入れられるべきだと勧告しました。さらに委員会は、司法関係者(裁判官、検察官、弁護士)が規約に関する知識、自覚、適用を改善できるよう人権教育・訓練のプログラムを改善するよう勧告しました。司法関係者の意識改革を求めたわけです。
ホームレスに関しては、日本政府に対し、ホームレスの広がりと原因と探る調査を実施するよう勧告し、すべての立ち退き命令、特に、仮処分命令による立ち退きが一般的意見4、7のガイドラインに一致する救済措置をとることを勧告しました(57)。※機会があれば、一般的意見について書いてみます。
最後に委員会は、政府が最終見解を広く社会の全ての層に知らせるように、勧告しています。権利があっても、知らなければ活用できないからです。とりあえず、ホームレスと呼ばれている人に、追い立てられない権利や、適切な生活水準を確保する権利があることを私たちも伝えたい。また行政や、市民にそのことを訴える手がかりにしたいと思っています。
政府報告には、医療や傷病給付、労働災害給付、失業給付の項目はありますが、野宿している人には手が届かないという現実は明らかにされていません。病気やけがをしても治療できず、労災にあっても補償されず、失業しても使い捨てという現実があるのです。政府は、生活に困窮する国民に対しては、生活保護によって「生活扶助、住宅扶助、医療扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助を行っている」と書いていますが、これも野宿している人には手が届きません。「相当な食料についての権利」に関しては「わが国では食料の適正な供給が実現されている」と述べており、野宿している人が食べるに窮していることを無視しています。最低の生きる権利の保障からも除外されていることが認識されていません。
小泉改革は、日本の問題は「高コスト構造にあり、人権費がコストを押し上げていること」だと考え、この構造を変えて国際競争力を強めることを目指しています。圧倒的多数の労働者の人件費をうんと引き下げられて、企業が強い競争力を持ったとき、日本はホームレスに満ち溢れた国になるのではないでしょうか?
(耀)