「上筒井から」Vol.11(Nov. 2001)

*月刊クレスコ11月号に掲載されたものを、許可を得て、転載させていただきます。

『芸予地震から学んだもの』



1. 地震発生

 3月24日、三方を険しい山に囲まれ、前は海という坂の町呉市を震度5〜6の激しい揺れが襲いました。急傾斜地にひしめき合ってたつ家々では被害が特に大きく、坂上の家の石垣が崩れ被害を被った反面、自分の家の石垣が下の家を直撃するというケースが続出。芸予地震、呉市の被害状況(6/6現在)は、全・半壊286棟749名、一部破損12,359棟37,750名。崖崩れ1,830箇所にも上りました。

2. 呉市地震対策本部へ

「自分のことは自分で何とかするしかありませんね。」
「私有財産は自分で守る。それが資本主義の原則です。」
「自助努力をして下さい。」
「個人の財産に公のお金を使うことはできません。」
藁をも掴む気持ちで相談にきた被災者に対して、呉市から帰ってきた言葉です。
「では、呉市としてどんな支援をしてくださるのか?」という問いに対しては、
「ビニールシートと土嚢の貸し出し。お金が必要なら500万円までの無利子での融資(80歳までの返済が条件)」との答え。
「高齢者や年金生活者は融資を受けても返済できないのでは」との問いには、
「日本は社会主義の国ではない。資本主義の国だ。払えなければ子どもや孫に頼めばいいでしょう。」などの暴言。
なぜ、このような冷たい対応をされなければならないのか・・・。やりきれない思いを胸に数多くの被災者が対策本部をあとにしました。

3. 「芸予地震被害者の会」結成!

かたくなに支援を拒みつづける行政に対して、この困難な状況を打開しようと4月10日『芸予地震被害者の会』が結成され、さっそく「・公的支援を求める署名活動・学習会・申し入れ行動」の3点を中心にした取り組みが始まりました。申し入れは、呉市へ6回、広島県へ2回、国(国土交通省や文部科学省)へ2回、計10回行ってきました。

4. 特例措置は出たけれど・・・

ねばり強い申し入れの結果、ついに特例措置での救済が発表されました。しかし、その内容は『家を自分で壊し、土地をさら地にして呉市に寄与すれば崖を修復しましょう』というものでした。あくまでも私有財産の援助はしない。自分の財産をすべて放棄したものだけは助けてやろうという方針です。これではたして支援といえるのか・・・。長年住み慣れた場所を無償でおいそれと捨てるわけにいかず、被災者は途方にくれています。
特例措置を受けて家も土地も失うか、受けずに自分の力で修復するか(場所により石垣の修復には1000万円〜2000万円かかる)どちらをとっても耐えがたい苦渋の選択を迫られているのです。

5. 大企業奉仕の政治を国民本位に!

私有財産に公的なお金は使えないというけれど、
「なぜ、大銀行に70兆円もの援助ができるのだろう。」
「呉ポートピアランド(遊園地)に市がお金を注ぎ込んで赤字になって倒産したが、このことはどう説明するのか・・・」
「役に立たない埋め立て(阿賀マリノポリス)で300億円以上使い、特定の大企業をもうけさせているのは誰か」
「100億円もかけて『戦争賛美の海事博物館』(戦艦大和・ゼロ戦・潜水艦など展示)を建設する必要はあるのか」
政治の仕組みを転換しないと、平和も民主主義も国民生活も守れない。このことに会員や呉市民が今気づき始めています。

芸予地震被害者の会・事務局長・O. T.


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