神戸YWCA地域活動部




わいわい通信 vol8. Top >> 特集

ちいきにひろがれ ふくしのわ


神戸YWCA 地域活動委員会ニュースレター Vol.8   2006.2発行
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特集 高齢者支援を考える 

介護保険見直しの時期になりました。今変えようとされる内容は“改正”なのでしょうか。皆が生活しやすいように変わるのじゃなく、政治に都合のいいように変わるのかも?個人の生活が政治に飲み込まれてしまわないよう、今、しっかり状況を見据え、声をあげていきましょう。  
“みんなに つながる 老後”のために。

アンケート回答報告

神戸YWCAの地域高齢者支援プログラムに参加されている方々にアンケートをお願いし、37名の方が回答してくださいました。ご協力を感謝いたします。

 回答してくださった方の年齢は、70歳代が11名、80歳代が17名、90歳代が7名、無回答が2名で、生活していらっしゃる住居の形態は一戸建てが27名、アパートが7名、無回答が3名でした。また、家族と同居されている方が18名、一人暮らしの方が12名、無回答が7名でした。今、YWCAで参加されているプログラムは図1の通りです。

 図2は、今の生活での率直な気持ちを聞いたものです。「今一番楽しいこと」と「今一番大切だと思うこと」は複数回答ありの項目です。
 会員活動として実施しているわいわい亭、わいわいランチ、わいわいデイルームの参加者に回答をいただいたので、現在は皆さん、健康で自立しておられるが、健康に不安を感じておられる方が多い。また人との交わりの場を求めておられる。できるだけ「要介護」にならず、「介護予防」の段階で止まることをめざして、YWCAが良き交流の場として、これからも活動していかなければと思います。
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在宅生活に必要なこと 〜訪問介護の立場として〜

“高齢になっても在宅で過ごすためにどんなことが必要なのでしょうか”
2005年も押し迫ったある日、数人のまごの手スタッフが日頃、訪問介護の現場で感じている思いを熱く語り合いました。

◆近所の人々の協力

「一人暮らしで認知症の症状をもつ高齢者の方の退院後の生活を支援する」というサービスの依頼がありました。退院後の生活のためにはまず環境を整えることが必要です。以前から密接に関わりをもたれているお隣さんや民生委員の協力がとても力強い支えになりました。また、訪問時間外のこの高齢者の方の見守りや金銭の管理など訪問介護では関与できない部分への積極的な協力もしてくださり、ケアマネージャーやご家族(この方の場合は姪でしたが)を含め、いろんな立場の人々の連携があってすすめていくことができた支援のケースでした。

◆密接な関わりをもつために

一人暮らしの認知症の高齢者の方へのサービス依頼はほかにもありますが、必ずしも上記のケースのように近所の人々の協力が得られるわけではありません。核家族化の影響や最近できたマンションに引っ越してきてひとりでお住まいの方もおられ、元々の地盤が希薄な場合もあります。そういった状況もふまえて、訪問介護の立場なりに「必要だと思われる地域のかかわり」を検討してみました。

・簡単なことのようですが、ご近所さんとのあいさつを欠かさないこと。また、回覧板や掲示板などで小さなことでも連絡事項を共有するまちづくり。

・インフォーマルな団体をどんどんつくっていくこと。例えば・・・

【元気な高齢者によるボランティア】
   閉じこもりがちな高齢者に同年輩としてかかわりを持つことで、ご本人が積極的に地域参加することができるように働きかける。

【元気な高齢者による子育て支援】
   長年の経験を生かし、年代を超えた助け合い・支えあい

・分室が開放スペースになって、気軽に立ち寄ることのできる地域の拠点となる。
                                           などの意見がでてきました。

◆在宅生活に必要なこと

以上、訪問介護の立場から述べると、高齢者の方が安心して住み慣れた家で生活を続けていくためには、ご本人をとりまくさまざまな立場の人々の協力・連携が必須であり、密接なかかわりを働きかけることのできる地域づくりが大切だと思われます。

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地域で豊かに生活するには・・・

まごの手 介護支援専門員 松田 恵美子

2000年よりスタートした介護保険も5年が過ぎ今年4月より大幅に改正されます。介護予防が重視され「地域密着型サービス」「地域包括支援センター」が創設されます。介護状態にならないように、また、要介護状態になっても住み慣れた地域で暮らし続けることを目指しています。

 まごの手ではいち早く、1997年よりヘルパー派遣を始めました。徐々に利用者は増えて、介護保険導入後は一挙に増えました。介護保険導入時は皆、戸惑いがありましたが、5年経ち生活と一体化してきました。介護保険での家事援助のサービスは週12時間のサービスでも本人負担は1ヶ月2,000円以内です。また、福祉用具購入、福祉用具貸与、住宅改修でも1割負担です。住宅で生活が安心してできるようになってきました。90代の男性Aさんは週3回ヘルパー派遣、週2回配食サービスを利用し、食住の環境は整えられ自宅で生活されています。また、85歳の男性Bさん、週3回デイサービス、週2回配食サービスを利用し、一人で楽しく生活されています。自分で利用サービスを選択できるようになってきました。

 今や介護保険の財政も危機と言われ、昨年10月より施設の部屋代、食事代が別途必要となってきました。また、4月より軽度の人を対象に筋力トレーニングなどを行う新予防給付が加わり、今までの家事代行型の訪問介護はヘルパーと一緒に家事に取り組む内容に変更されます。また、介護予防のための転倒骨折予防、閉じこもり予防、筋力トレーニング、栄養改善などのサービスが準備されます。4月より制度の改正で地域包括支援センターがうまく稼働するか心配です。また、閉じこもりの人がデイサービスに行くのでしょうか?高齢者が筋力トレーニングに励むのでしょうか?介護保険では楽しみのお手伝い(映画にヘルパーが一緒に行く、美容院に一緒に行くなど)はできません。また、話し相手だけにヘルパーが行くことはできません。生活を豊かにする事は省かれています。制度でできないところを地域ボランティアで声をかけあい支えていけたら、慣れ親しんだ地域社会で人間らしく暮らせるだろうと思います。

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えらいこっちゃ!介護保険が変わるで!

まごの手 管理者 寺内 真子

20056月に改正介護保険法が成立しました。20064月より、介護保険制度が大きく変わります。まごの手の私たちも昨年は法改定の情報に右往左往してきました。まだ、発表されていないことも多く、今後変更もあるかもしれませんが、今わかっていること(20061月現在)をお伝えします。

2000年に始まった介護保険制度も5年を経て、すっかり社会に定着しました。高齢化が進み、介護保険の利用量も増加の一途をたどっている中で、介護保険制度が破綻しないよう持続可能なものにするために(端的に言えば、財政引き締め)というのが、今回の改定の主な目的で、「改正の6つの柱」には、@予防重視型システムへの転換、A施設給付の見直し、B負担のあり方、制度運営の見直し、などがあげられています。

介護予防に力点が置かれているのは、介護保険を利用しなくてよいようにということが目的にあります。施設給付はすでに昨年10月から見直されていて、特別養護老人ホームや老人保健施設などを利用する場合に居住費(いわゆるホテルコスト)と給食費が新たに利用者の自己負担となりました。お金のかかる施設から在宅への動きを加速するのが目的でしょう。また、今回の改正では見送られましたが、介護保険と支援費(障害者施策)を統合し、20歳以上の人から保険料を徴収することが将来的に視野に入れられています。

◆区分変更で高まる「自立支援」のかけ声

介護予防について少し詳しく書いてみます。まず、介護度区分の変更と新たなサービス体系についてですが、現行の介護度区分の要支援は要支援1に、そして要介護1の大部分(約7?8割と言われている)は要支援2になります。現行要介護1でも心身の状態が安定してい

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ない場合や認知症など、介護予防サービスでは状態の改善が難しいとみなされる方の場合は(新)要介護1となります。ちなみに、神戸YWCAまごの手の利用者の約半数は新区分では要支援の方々です。これは、全国における割合とそれほど大きな違いはありません。

新しい区分で要支援12の方は「予防給付」、要介護1から5の方はこれまでどおり「介護給付」によるサービスを受けることになります。「予防給付」は新たにできるサービス体系で、介護予防事業者(新たに申請)が介護予防訪問介護や介護予防通所介護など新しいメニューのサービス提供を行います。利用者の日常生活での心身の状態が維持・改善されることが大目標とされ、「自立支援」のかけ声はより一層高まるでしょう。

要介護認定で自立となった高齢者も、一般高齢者(元気な高齢者)と特定高齢者(要支援、要介護状態になるおそれのある人)にスクリーニングされ、特定高齢者と判定された人を対象に、介護予防事業が地域支援事業として実施されます。生きがい対応型デイサービスはこの中に位置づけられています。

 

 

◆新たな組織「地域包括支援センター」の抱えるあやうさ

要支援12の方、特定高齢者と判定された方、両方に対して、介護予防ケアマネジメントが実施されます。実施主体は新たに設置される「地域包括支援センター」です。

「地域包括支援センター」は神戸市では「新・あんしんすこやかセンター」という名称で、各中学校区に1カ所、合計77カ所設置されます。すべての高齢者を対象とした総合相談窓口であり、ワン・ストップ・サービス、つまりここに行けば、高齢者の抱える様々な生活問題に解決の道筋がつくということが期待されています。権利擁護(虐待防止や成年後見)、認知症高齢者への支援などにも対応することになっています。また、先述の介護予防ケアマネジメントを実施し、介護予防事業に繋ぎます。医療、福祉、保健などの地域にある様々なサービス(この中にはYWCA分室活動のようなボランティア活動も含まれています)をコーディネートし、高齢者を包括的に支援する役割を担います。うまく機能すればなかなかよいシステムだと期待しなくもないのですが、実際は大変だと思います。潤沢な予算があるわけでもないので、どこかにしわ寄せがいくのではないかと危惧します。

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自立と言われ、自己責任と言われ、なんだか、当の高齢者も、福祉現場で働く人も、介護事業者も、そして行政からあてにされているボランティアも、なんだかしんどいなあ、と言うのが私の感想です。これが小泉さんの「骨太」「三位一体」改革なのだと実感させられます。

 

 

◆現場のニーズが社会を変える原動力になる!

今回、40歳から65歳の若年層の末期癌患者が、介護保険を利用できるようになります。神戸YWCAでは、当初から「在宅ホスピスケア」を目指してヘルパー養成を行っています。昨年は独立行政法人福祉医療機構の助成を得て、「在宅ホスピスケアに従事するホームヘルパーの専門研修」を実施し、まごの手でも少しずつ実際にケアに入るようになりました。これまで介護保険が利用できなかった方に道が開かれ、在宅で過ごしたいという方の希望を叶えることができるようになるなら、よかったと思います。ただ、医療費削減のため、治療目的でないと(ホスピスは別として)入院できないということもあるように思います。療養型病床が廃止の方向へ向かうとの報道もありました。施設か在宅か選択できてこそ心から良かったと思えるのですが。単身高齢者が増加している中、心配な問題です。

ともあれ、現場のニーズというのは社会を変える原動力になる、私たちの活動もそのようなものでありたいと思います。

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今、知りたいことが 出ている本

『老いる準備』  上野千鶴子 著

学陽書房 出版 20052

女性問題で知られている著者が、50歳になり、人生のピークを過ぎてこれから老いに向かって下り坂の人生をどう生きるか。社会の様々な問題を、時にはデータ−も取り上げて書かれている。心身ともに老いていく現実をすなおに認め、これまでと違った新しい経験に期待している。

 介護保険制度の導入により、どう社会が変わったか。介護と家族、女性の介護ビジネス参加や、これからの高齢社会でのNPOや地域のコミュニケーションの必要性など広く述べられている。

〜目次から(抜粋)

第1章 向老学の時代へ

第2章 介護と家族
    介護とジェンダー
    死は家族のものか

第3章 介護保険が社会を変える
    介護保険は家族革命だった

    官・民・協の棲み分け
      ケアの脱私事化へ

第4章 市民事業の可能性 
    福祉ワーカーズ・コレクティブの未来
    市民事業の可能性

第5章 ニューシルバーが老いを変える

    ああ、生きててよかった